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何を書いても(描いても)日付けを記入する習慣は、いつ頃からだろう。
いつものように今日も、A4 の裏紙の左上に件名を、それに続いて日付けを書き入れた。“Nov.”...
すぐ間違いに気付いた。横線一本、Nov. を無かったことに、右に続けて“Dec. 1. Mon. H.20.”と書き入れ、件名のところから併せて下線を引いた。作業が始まった。
Dec. / December / 12月 / 十二月 / 師走
H.20. / 平成 二十年も、十二月になってしまった。この一年は何だったのだろう。具体的には思い出さないが、あまり代わり映えしない自身の状況に目が眩む。
帰省して三年くらい、大学を出てから次の春で四年、いい加減な志で大学に入学して九年、何だったのだろう。生きてきた二十七年は? 戦後六十余年は? 太陽地球四十六億年は? 星は宇宙はインフレーションはホーキング輻射は?
手許のスケッチブックの一枚目の日付けは、“H.16. 5. 30.”となっている。ヘタクソだ。
師走だ。走れ。
Dec. 1. Mon.
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web で日記なんて書いている場合じゃないんだけども、何かが滞った場合(場合場合)どうにも焦って、冷静に考えようとすれば逃避が始まり、気分転換をしようとすれば本筋が気になり(故に私は気分転換に成功した試しが殆ど無い。少なくとも成功例を思い出すことができない。)、だから、こうやってキイボードをぎっちゃぎっちゃ叩いていれば何かやっているような錯覚に陥ることができ、ああこれ逃避じゃんと思いながらも文章を考えながらそこそこ早いタイピングなわけで頭脳神経はしっかり使っていよう。
そうだとも。最初に日記と書いたものの、それは日付けを付して書いたもの、程度の意味しかなく、ここに書いてきたこと今後書くかもしれないこと全て嘘か虚偽である。全て嘘というのも嘘である。何故なら全てが嘘だからだ。さあ、頭を使うんだ。賛成の反対なのだ。メタメタにされる。
焦る。とにかく焦る。すみません!山本先生! 小野 は、今も……
たばこバラ売りしてないかな。焦ってひと箱買った。吸ったら、案の定、気分が悪くなった。捨てようかと思ったところで、同じようなことがあったなと思い出した。そのときは人にあげたのだ。たばこの煙、たばこをやめた体には、くさい。のどの奥、煙り棒持つ右手。右足、右の○。
フィルムスキャナーを買った。高かった。今まで使っていたフラットベッドのフィルムスキャンは、像が不鮮明なのは仕方なしにせよ、カラーのノイズがヤバくて使い物にならん、つまり私が八年撮りためた膨大なカラーネガフィルムはどうなってしまうの?というのがあったので、焦って買った。いやあ、きれい、どうやったっていままでより悪くはならないんだけど、鮮明で、速くて、嬉しくて、フィルムをちまちまデジタル化していることに虚無を感じて、そういえば奨学金の返還止めてもらってたんだっけ?、年明けたら歯ブラシ買い替えようかな、気付いたらフィルムスキャナーを窓から放り投げていた。書かなくても判ると思うが、壊れた。
昼のラジオは国会中継。これがなかなかおもしろい。自民も民主も公明もその他泡沫も、まあ、便所に流してしまえば良い。志井 委員長が突然スターリン化して日本を美しく真っ赤にしてくれたら良いと思う。労働者の味方は労働しない者を美しく粛清してくれるはずだから、私はもうだめだ。失業率 0%!
Dec. 5. Fri.
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自分はブラジル人なのではないかという疑念が、長いことつきまとっている。日本時間の夜間に活動的で、昼間はいつも眠いからだ。
前日金曜は起床が遅く、それならばと夜を徹してそのまま土曜日を始めようと思ったが、どうにも朝方眠くなったので掛布団だけひきずって少し眠った。目を醒ましたときには朝の光線が隣の建物の東壁を照らし、反射が私の部屋を差していた。
予報通り、冷たい朝だった。
のろのろと、簡単に身を改め、しかしその先は不鮮明だった。思い出す昔のことは鮮明だった。
やはり日中は眠かった。力が抜けた。私は宣誓を反故にして、再び掛布をひきずった。眠いのに、眠れない、やる気もない、最低の感覚を、読みかけの本でごまかした。三割ほど理解を置き去りにして読み進める中に出会った性交の描写が、酷く艶かしかった。ここ数日の深夜便のナイトエッセイが、セイコーの時計職人さんの話だったこともあって、性交という単語が音を伴って耳についた。(※)
反故にした宣誓。誰に対してではなく、自身に対して反故にしたのだ。もう、反故し得る宣誓を立てる相手もいない。
昔、私のことをパンクだと言った人がいた。きちんとしているつもりで、パンクだったのだ。意外ではあったが確かにそうかも知れないと思ったし、当時は新しい概念を得て喜びもした。今は全然、嬉しくねえ。パンクどころじゃなくクズで、ロクでもない。ロックなら良かったのに。
そのパンク野郎を親友とまで言ってくれた(おそらく本心だろう)彼も、不通になってしまった。私がいけなかった。今さら、どうにもならない。
***
陥ちた眠りから醒め、掛布を剥いで外の共同トイレに出ようとすると、向いのアパートの彼と彼女が丁度部屋から出てくるところだった。私は開けようとしたドアを引っ込め、彼等が階下へ降りて行く気配をじっと待った。パンクは、昼間はおとなしくすべきなのだ。
私は相変わらずブラジルですが、リオ時間だとしてもがんばって、昔話したことを、すっかり遅くなってしまったけれど、まるっきり反故にしないで済んだらと、思っている。
Dec. 6. Sat.
※ 時計メーカーのセイコーと、男女の性交とは互いに特別な因果関係はないものと思われる。
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煙草がまだ残っている。譲るべき誰も居ないので、一人で消費する。たぶん、残りはもう一桁だ。
一本減らそうと、ドアを開けた。外の廊下へ踏み出す一瞬の視界に、向いのアパートのドアが開きかけてそっと閉じて行くのを見逃さなかった。
昨日の逆だ。私は煙草に火を点け、廊下の冊に寄り掛かって煙を吐いてみたが、開きかけて閉じた向いのドアからの音沙汰はない。昨日私がしたように、先方もドアの向こうでこちらの様子を伺っているのだろうか。
私は、わざと靴の足音をパコパコ響かせて、廊下の端の物干台の方へ消えてみせた。西の空を眺めながら(ここの物干台からは西の空しか見えない)、気遣いって本当はこういうことじゃないよな、なんて思ってみたり、もっと別の、例えば昔のことなんかを思ってみたりした。
ゆっくり吸って、ゆっくり火を消した。お向かいさんのドアが開いたかどうか、物干台からはよく判らなかった。
Dec. 7. Sun.
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友人からの連絡を待つ間、私は知らぬ土地でひとり、金はあまりないけれども日に焼かれるのも嫌なので、¥100マックによるアイスコーヒーSサイズ一杯でマクドナルドに居座ることにした。
程なくしてうら若き乙女たち、今をときめく女子高校生諸君が二階席に上がって来られ、私の近しい場所に席をとった。暇であった私はにわかに心を踊らせ、わざわざヘッドフォンを耳にかけ隠蔽工作も万全、彼女らのぴちぴちとした会話を盗み聴くことにした。
果たして彼女らの口々から発せられたのは、誰それがむかつくだの調子に乗っているだの、そのような人間の側面であった。
私は彼女らの如くかわいらしい生き物から呪いの言葉が吐き出されるのを見たくない。リモコンをひとひねり、MDプレイヤーを起動させたのです。
嗚呼お願いだから君等、いつか素敵なおねえさんになっておくれ。
Jun. 24. Fri. 2005
昔の文章です。今書いたとしたらおそらく、高校生女子を“かわいらしい”とは形容しないでしょう。その日から三年以上経ち、彼女たちはどうなったでしょう。実際のところ微塵も気にはなりませんが、私自身は四つ歳をとった計算になります。Dec. 10. Wed. 2008
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あまり大きな声では言えないのですが、NASA が 2016 年に計画している火星圏への有人飛行計画の人員募集がありまして、こっそり応募していたところ、なんと乗組員一次選考を通過してしまったようです。
まあ、選考は 2012 年までの間に計八回あるので、喜ぶにはまだまだ早いのですが、一次でも通過できたことが非常に嬉しく、今日は普段の倍も筋トレしてしまいました☆
というわけで、来週からヒューストンでの研修が始まるので、しばらく更新を停止します。もし落ち着いたら、米国から更新できるかな。こいつはビッグニュースだぜ。WAKWAK
Dec. 10. Wed.
というわけですので、しばらく更新を停止します。たぶん忙しくなるんで。春の頃には再開できればと思っています。それが暦の春か気候の春か再来年の春かどうだかわかりませんが。
中途半端ですが、作品などたまに観に来ていただければ嬉しく思います。では、また。
Dec. 10. Wed. 2008 / ono keiji