平成 二十一年 水無月

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人差指と中指に挟まれた煙草の根元に薄紅。あら、ルージュマジック。そんなはずはない。唇が切れていたようだ。
 雨上がりの曇天。夏至も近く、早朝の町は既に明るい。電話線やらなんやら、ケーブルの隙間に蜘蛛が風に揺られている。


Jun. 4. Thu. 05:09

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まっさらのキャンパスノートの 2 頁目左上に“10”と記入。第26、27週の日程表、“09”から継続のメモなどを書き写す。観たい映画のメモは全く消化されていない。ツタヤのカードも身分証もない。とりあえずメモだけはしておく。“映画 : 華氏 451 フランソワ・トリュフォー監督” 他多数……


深夜便は冒頭からの予告通り、01:00 の時報前に中断した。久しぶりに NHK の君が代を聴いた。青い空。
 コールサインの読み上げのあとは、ピーーと、無機質な音が永遠に続くように思えた。ペンを置き、ミルクを入れたコーヒーをトロ火に、6 分。プラグを抜いたトースターの目盛りをタイマー代わりにひねる。
 ラジオのスイッチを切ると、生きて動いているものはトースターのつまみだけ。少し開いた玄関のドアから、夜の清冽な空気が足許を抜ける。代わりに私のにおいを含んで淀んだ空気が追い出されていく。私の好きな夜の時間。私だけの。
 チキチキチキ……


Jun. 9. Mon. トースターのいる無題

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imitated records or false memories

漁業通信

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