平成 二十一年 文月

:

東京に居る。
 先月の中旬、東京のデザイン事務所の面接試験に呼ばれてノコノコ上京してきた。緊張の面持ちの私の前に現れた採用担当者は、私の経歴書類を見るなり言った。
「えっ、ここ(岡山)からわざわざ来たの!?」 それは、応募の際のメールにも書いていたはずなのだけど。
 寒いも暑いも概ね我慢できる。温度差は、耐え難い。


国立に暮らしている友人の厚い好意と、暴発することのない——険悪な冷戦によって、だいぶ長いこと置いてもらっている。予定の倍、などと書きたいところだが、予定など最初からなかった。今もない。日々感謝。
 三年前の二月末日、東京生活の最後、引越屋の手違いで岡山にも帰れずアパートも引き払って行き場のなくなった私はそのときも一晩、国立を頼った。彼と会うのはそのとき以来だった。他にもこの三週間ほどで何人も、友人たちと再会した。ほとんど誰もが三年ぶりだった。岡山に暮らしている三年間の総計よりも、この三週間の方が多く人と喋っただろう。これがたぶん冗談ではないところが恐ろしい。


知りたかったことが少し判った。知らなくてよかったことを少し知った。会いたかった人たちとは概ね会えている。会いたくない人はいない。会えない人とはもう会えない。


***


部屋にはテレビがある。午後九時過ぎ。夕飯の支度を済ませて、野球中継を観ながら、歳を重ねて(少しだけ)ポニョになった友人の帰りを待っている。
 あ、ベイスターズ負けた(いつも通り)。


Jul. 9. Thu.

:

imitated records or false memories

漁業通信

此のサイトに有益な情報はありません。

since Aug. 8. 2002 / Copyright Chisso / All right reserved.
inserted by FC2 system