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アパート二階の廊下の端、欄干に寄っかかって東の空を見上げると電線の向こうに積乱雲が見えた。西の空にも見えた。部屋でハーフカメラにモノクロフィルムを込めて、外に出掛けた。空だけ撮っていれば良い。目一杯絞って、雲の陰影が出れば良い。
近所をぐるりと廻り、久しぶりの喫茶店でアイスコーヒーを啜り、中途半端になった時間を市街へ歩いた。道には人も車も多かった。男の子の手を引きながら子供に合わせて歩く父親を追い抜いた。まるで夏休みのようだった。
夕日の逆光、順光、いづれも雲は輝いていた。
53号線沿いを歩きながら見上げる視界を、ふいに大きなアパートメントが遮った。そして丁度、全階の廊下で蛍光灯が一斉に、しかしそれぞれほんの少しの時差をもって次々と点灯する様子が見えた。私はその時、その瞬間を見た私が確かに居たことを知った。
日はますます低く、陰に沈んだ国道の左車線には赤のランプがひしめいていた。
Sep. 5. Sat.