平成二十六年 睦月

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コピーディスクのスピッツを回しながら、ひげ剃りの湯が温まるのを待っている。
 今朝も外の箱に猫の姿はなく、ただ餌が喰われた跡だけを残している。アパートの廊下から見える家々の屋根に薄雪——冬。
まぶたの内側で生きている……


Jan. 19, Sun., 8:52 A.M., アルバイトに出る前

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虚言を用いて脱走し、駆け込んだA喫茶の隅の陽当たりで人生を買い戻した。


Jan. 26, Sun.

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硝子を磨いたように星が綺麗な冷たい晩でした。新しいお客さんに成田屋のカウンターでご馳走になった帰りのほろ酔い大通りで、なにしろ星が綺麗なので、いつも耳にする喫茶店に初めて入ってみました。
 奥の窓向かいの横並び4席の端に女の子ひとり、その反対端に席をとって、むにゃむにゃと喋るお兄さんにブレンドを注文しました。目の前の窓の外ではパチンコ屋が輝いていました。本でも読もうかと思っていましたが、なにしろ星が綺麗だったので読めませんでした。品の良い、飲みやすいコーヒーを傍らにノートを開くのはだいたいどんなときでも愉しいものです。もうすっかり予定は埋まってしまい、実は何も考える余地はありませんでした。前日の脱走劇について愉快に思い出したり、対極の女の子が帰ってひとりになったり、他のお客さんが2組ほどやってきて勤め先の話をしていたり、案外酔いが深かったことに気付いてむちゃくちゃにラクガキをしたり、冷める前に飲んだコーヒーはカップの底で乾いていました。
 気付くといつの間にかパチンコの灯は落ち、暗い箱になったビルの上に明るい星をひとつ見つけたのでした。なにしろ星が綺麗だったから。


Jan. 27, Mon.

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imitated records or false memories

漁業通信

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