平成二十八年 神無月

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東京からの旅人と少し積もった話をして、閉店のカフェからホテルまで送って別れた。
 こんな道もあったのかと、ふだんはあまり通らない界隈を、とりあえず知っている界隈の方へなんとなく歩きながら、カバンのポケットのiPodを思い出して鳴らした。青いLEDの街灯を初めて見た。犯罪を抑止する効果があるようなことをどこかで読んだ気がするが、とくに何も感じなかった。
 駅に近づくにつれ、知っている場所が何故だか新鮮な印象に見え、写真を何枚か撮った。25時すぎの駅前を横切りながら、ここで知り合いにばったり出くわしたらいいのにと思った。出くわすはずはないと思ったし、呼んでも来ないだろうし、呼べない。
 誰かにお茶の相手をしてほしいと思いながら、肉体はまっすぐに市街地から遠ざかった。


平日の深夜だというのに、ひとりでうろついているような人間が散見され、いちいち怪しかった。若い頃は、寂しいなんて全く感じなかったなと思った。


Oct. 12, Wed., 2016

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漁業通信

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