平成 二十一年 霜月

:

強い風の吹く、冬の一日だった。昨日の雨を思い出す。物干し台から、雨に打たれる蜘蛛を眺めていた。台の欄干から電話線のケーブルの間に張り巡らされた巣は水滴に飾られて美しかった。それは嘘だ。きっとそうだったに違いないと、今テキストを書きながら捏造した記憶だ。私は中央で風と雨に揺られている蜘蛛を眺めていたのだ。こりゃだめだなと思った。今日は晴れたがあいにくの強風で、物干に出てみると所々ちぎれた糸屑が風に流れていた。主の居ない蜘蛛の巣は、どれもこれもまったく張りがない。


「わたしのこと、どこが好きだったんですか?」
「うん、ちょっと変わってるところかな」
 個性的で素敵だった。彼女にとってはそうではなかった。「そんなにふつうと変わってるかな……」となって、あの日の僕は、


これから冬がきて厳しいが、生きていたらまた巣を張り直せ。私などに言われなくてもやるか。


Nov. 2. Mon.

:

imitated records or false memories

漁業通信

此のサイトに有益な情報はありません。

since Aug. 8. 2002 / Copyright Chisso / All right reserved.
inserted by FC2 system