平成三十一年 如月

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どうしてだか眠れない晩がつづき、十年以上昔に処方されていた睡眠剤の余りを、一錠を半分に割って使い始めた。
 目醒めた翌朝の感覚は、酔っぱらいに近いが、やや異なる。すべての動作に慣性の重りが働くのがアルコール酔いで、サイレースでは反射反応にディレイが生じる。
 早めに起きて、出勤前のコーヒーの支度をしながら、コーヒーサーバーを割った。


アルバイト先へ向かう陸橋を上っていく向こうに、昨日の午後に雨を降らせたような雲たちが切れぎれになって薄い青空を流れていた。ランダム再生のMP3プレイヤーが、サティの「Je te veux」を流し始めたので、空を飛んでいるような気がした。


Feb. 4, Mon., 2019

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「なんだか少し精悍な顔つきになりましたね」
 何年ぶりかで訪れた洋食屋のご主人がそう言った。毎日見る顔にそうした変化があったか自分では判らず、心当たりもない。ただ年齢を重ねただけの顔面を、ご主人なりに言葉を選んでいただいたのかもしれない。


「お仕事はどうですか」
「ぼちぼちです。うーん、ちょっとずつですが良くなっています」さらりと嘘を吐いた。
「それならいいんです。良くなってるなら」……


Feb. 17, Sun., 2019

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漁業通信

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